市街化調整区域とは?調査方法や許可の取り方をわかりやすく解説

家を建てる

日本中の土地にはさまざまな行政上の分け方がありますが、「市街化調整区域」もその中のひとつです。
マイホームを建てようと土地探しをしていると、物件情報の中に「市街化調整区域」や「市街化区域」と書かれているものもあるでしょう。これらの土地は、建物を建てるための条件が異なる区域のため、土地購入を検討される際には注意が必要です。
この記事では、「市街化調整区域」についての基礎知識や、購入を検討する前に知っておくべきメリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。
知らないで「市街化調整区域」の土地を購入してしまうと、大きなトラブルになる可能性があるため、言葉の意味や役割をしっかり理解して、購入を検討しましょう。

市街化区域と市街化調整区域

新しく家を建てる場合、どこでも好きな場所に建てられるわけではありません。地方自治体が決めた都市計画法に基づいて、「市街化区域」と「市街化調整区域」が指定されており、土地の役割や許可の制限などがそれぞれ異なります。
まずは市街化区域と市街化調整区域の違いを解説しましょう。

街の発展を促す市街化区域

市街化区域とは、地方自治体が約10年以内に市街化を積極的に進めるエリアのことです。すでに住宅やビルが立ち並び、市街地として栄えている場所や、多くの人が利用している土地を指します。
地方自治体が市街化に向けて、人々が土地を利用しやすいようにインフラ整備などを行い、計画的に発展させていこうとしている区域です。
市街化地区は都市計画法にて、用途地域という13エリアに分類されています。用途地域は利用目的ごとに、住宅用、商業用、工業用地域に分けられていて、建ぺい率など細かく制限を設けている行政区分です。
市街化区域では、基本的に工業専用地域以外は住宅を建てられます。

街の発展や開発を抑える市街化調整区域

市街化調整区域は市街化区域に隣接する、都市計画法によって市街化を抑制するための地域です。そのため、住宅や商業施設、工業施設の建設は制限され、原則として認められていません。
市街化調整区域があることで、市街地の周辺にある農地の、急激な市街化を抑制しています。制限を設けず、どんどん農地が転用されて住宅や商業施設になってしまうと、農地や森林が急速になくなる危険があるでしょう。
他に農地を守る制度として、市街化地域の生産緑地地区があります。生産緑地地区に指定されると、30年の営農義務が課されるとともに、固定資産税が農地として評価される農地課税扱いに変更されます。
このように、市街化調整区域や生産緑地地区を設定することで、短期間で農地や森林などの自然環境を壊してしまわないよう、土地開発から守っているのです。
だからといって、まったく開発許可がおりないわけではなく、地方自治体は必要に応じて許可を出しています。

市街化調整区域で建築許可が必要な建物・許可不要な建物

市街化調整区域は原則として、住宅や商業施設、工業施設の建設を認めていません。しかし一定の条件をクリアすれば、開発が認められる場合があります。
また、市街化調整区域では新築する場合だけでなく、すでに建っている建物の増築や建て替え、リフォームにも許可が必要です。
現在住んでいる場所が市街化調整区域の場合、登記簿謄本で土地の区分が「宅地」か「農地」かを確認しておくことをおすすめします。区分によっては行政への許可だけでなく、売却の条件などが異なるため、チェックしておくとよいでしょう。

許可必要な施設

市街化調整区域で開発したい土地がある場合、都道府県に許可を得られれば建築できる施設もあります。
計画都市法34条1〜14に該当するものの一覧をまとめました。

計画都市法34条 概要 許可が必要な施設
1号 居住している人が利用する建物や、日常生活のため必要な物品を販売する店舗 社会福祉施設・医療施設・学校など
2号 鉱物資源、観光資源、その他資源の有効な利用上必要な建築物または第一種特定工作物の建築物 ホテル・遊園地・ゴルフ場など
3号 温度、湿度、空気等について特別の条件を必要とする建築物または第一種特定工作物の建築物
4号 農産物、林産物若しくは水産物の処理、貯蔵若しくは加工に必要な建築物 畜産食料品製造業、野菜かん詰・果実かん詰・農産保存食料品製造業、動植物油脂製造業、精穀・製粉業、配合飼料製造業、製茶業、でん粉製造業、一般製材業などの工場ほか
5号 農林業などの活性化を促すための建築物
6号 中小企業の活性化に寄与する建築物
7号 市街化調整区域内の既存工場と密接な関連があり、事業の効率化を図るため建築物
8号 危険物の貯蔵又は処理に供する建築物火薬取締法第12条に規定する火薬庫であるもの
9号 道路管理施設、休憩所又は給油所等の建築物 ガソリンスタンド、水素スタンド又は自動車用充電設備施設、農産物の発送所、コンビニ
10号 地区計画又は集落地区計画の計画に適合する施設 ガソリンスタンド、水素スタンド又は自動車用充電設備施設、農産物の発送所、コンビニ
11号 市街地区と一体的生活圏を構成し、50以上の建築物がある地域の建築物 住宅の改築や建て替え、新築、増築
12号 市街化を促進するおそれがないと認められ用途を制限された建築物 20年以上居住する6親等以内の親族がいる人の新築
13号 都道府県知事に届け出て当該土地に関する権利のある建築物
14号 市街化区域内で行うことが困難で著しく不適当と開発審査会が認める建築物

許可不要な施設

都道府県へ開発許可の申請がなくても、建築可能な施設はあります。

・農林漁業者の住宅や、農林漁業用建築物
・市街化調整区域内に居住している者の、日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理などの業務を営む店舗
・鉄道の施設、医療施設、小中学校、高校、図書館、博物館、公民館などの公益上必要な建築物

市街地調整区域では、小規模の建物であっても、建築する場合は原則的に開発許可の申請が必要です。また、市町村の条例など地域ごとに制限が異なるため、市町村の役所などで確認しましょう。

市街化調整区域の調べ方

この章では、新築住宅などを建てたい土地が、市街化調整区域であるかを調べる方法を解説します。方法は主に2つあります。

市町村の都市計画マップ(都市計画図)を確認する

購入したいエリアが決まっている場合は、市町村が公開している「都市計画図」で用途地域を見てみましょう。
用途地域とは前述したとおり、都市計画法のなかで用途に応じて13地域に分けられたエリアのことです。
地方自治体ではエリアごとに、都市計画区域とそれ以外の区域を設定しています。都市計画区域はさらに、市街化区域と市街化調整区域に、市街化区域は用途地域に分類されます。
インターネットで「都市計画図 調べたい市町村」で検索すると、用途地域が分かる地図情報が見つかるでしょう。
不動産情報サイトでは、用途地域の欄に市街化調整区域可かが記載されているため、確認してみてください。

市町村の都市計画課に問い合わせる

購入したい土地が「市街化調整区域」であるか、その場合の開発申請方法などを詳しく知りたい場合は、市町村の都市計画課に問い合わせられます。
都市計画法の制限だけでなく、市区町村ごとに決められた土地制限の詳細は異なります。「市街化調整区域」で開発申請を予定されている場合は、市町村に直接問い合わせましょう。

市街化調整区域のメリット・デメリット

市街化調整地区は原則として建物は建てられませんが、例外として、開発許可が得られる場合があります。
市街化調整区域で住宅を建てた場合の、メリットやデメリットとはどのようなものがあるでしょうか。この章で詳しく解説していきます。

メリット:土地が安い

一般的に、市街化調整地区は市街化地区よりも、土地の価格がかなり安く設定されています。同じ広さで比べると、市街化調整地区の土地は、市街化地区の7〜8割程度の価格で購入できる場合もあります。場所によっては半分以下の価格で購入できることも。
建物にお金をかけたい、広い土地を購入したいなど、こだわりのある人にとっては魅力的な土地といえるでしょう。

メリット:税金が安い

市街化調整地区は、市街化地区よりも固定資産税が安いというメリットがあります。
市街化調整地区では、土地の価格が安い上に建物に制限があることから、土地と建物の評価が低くなる傾向があります。固定資産税は土地と建物の評価額に応じて課税されるため、負担が小さくなるのです。
さらに、市街化調整地区は都市計画税を支払う義務がないため、税金が節約できます。具体的な税額については自治体によって異なるため、市町村に問い合わせてみましょう。

メリット:周辺への配慮が少なく済む

市街化調整地区は、市街化地区に隣接した自然豊かな地域です。田園風景が広がっていたり、大きな公園があったり、のんびり子育てしたい家族には最適な場所です。
市街化調整地区では建物を新築する場合、隣の建物と一定の距離を空けなければならないというルールがあります。
子どもが泣いたり騒いだりしても近隣住民に迷惑がかからず、ストレスなく子育てができるのは、子育て世代にとっては大きなメリットです。
また、交通量も少ないことから安全性も高く、騒音問題もありません。基本的には大型商業施設やビルなどが建つこともないため、静かな環境で生活できるでしょう。

デメリット:開発許可を取る必要がある

市街化調整区域で新築住宅を建てたい場合は、開発許可を申請する必要があり、建て方や建てられる規模にも制限がかかります。また、改築や建て替え、リフォームする場合でも開発許可を申請しなければなりません。市町村によっては、延べ床面積の1.5倍までなど、一定の規模までしか建て替えが認められないこともあります。
中古住宅を購入してリノベーションしようと思っても、開発許可の申請義務があるため、注意が必要です。許可が得られれば住居を建築できますが、思惑通りに建築できない可能性もあります。
許可が出るまでの期間は市町村によって異なりますが、おおむね1カ月前後はかかると考えていた方がよさそうです。
小屋やガレージなどの小さい建物を建てたい場合にも、開発許可を申請する必要があることも覚えておきましょう。
開発許可の範囲は市町村によって異なり、市街化調整区域でも条例によって開発を認めている自治体もあります。気になるエリアがある場合は、市町村の担当部署に直接問い合わせてみるといいでしょう。

デメリット:インフラや商業施設が充実していない

農地を守る目的で設定されている市街化調整地区は、住宅やビルなどの建物を建てることを前提としていない土地のため、インフラ設備が遅れている場合があります。自治体から工事の助成金が受けられないこともあり、自費で負担する可能性があるため注意が必要です。
また、基本的に商業施設がほとんどなく、将来的にも新しい施設が建設される確率も低いでしょう。学校や病院などの、生活に必要な施設が近くにない場所もあります。
ただし、地域によってインフラ設備の充実度や周辺環境は大きく異なるため、気に入ったエリアがある場合は、市町村に問い合わせることをおすすめします。
市街化調整地区での生活は、日常生活で周辺地域に利便性を求める人には向かないでしょう。

デメリット:売却が難しくなる可能性がある

市街化調整地区は、土地の制限が多く評価も低いエリアです。デメリットを感じる人も多いため、買い手を見つけるのは難しいでしょう。
しかし、すでに宅地になっていて農地ではない場合は、土地の評価額が上がり、売却しやすくなります。
市街化調整地区での売却条件は、買い主の使用目的による開発許可の種類で変わります。そのため、専門的な知識を必要とすることが多く、一般的な売主では取り扱いが難しいでしょう。
市街化調整地区の土地を売却したい場合は、自治体の担当部署に相談してみましょう。また、市街化調整地区を専門とする不動産会社にお願いすることも、検討してみてください。

市街化調整区域については不動産会社や地方自治体などにご相談を

ここまで市街化調整区域についての基礎知識や、購入を検討する前に知っておくべきメリット・デメリットなどを詳しく解説してきました。
自然が豊かで、ゆったり生活ができそうな市街化調整区域ですが、新築住宅の建築にはさまざまなハードルがあります。また、市街化区域とは違って、日常生活で不便さを感じることもあるかもしれません。
気に入ったエリアが市街化調整区域だったときは、建築の条件やどのような問題が起こりえるかを、不動産会社や地方自治体に相談してみましょう。

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