耐震等級とは?地震に強い住宅の基準を基礎から学ぶ

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 地震の多い日本では建物の耐震性能は非常に重要です。耐震性能はマイホームの購入を検討するときに必ずチェックすべきポイントですが、どういったところを重視すべきでしょうか?今回はその評価基準である「耐震等級」について解説し、地震に強い住宅を選ぶポイントについて説明していきます。

耐震等級とは?

 耐震等級の概要

日本国内において、建物の仕様および品質の基準を決めるのは「建築基準法」ですが、これは建物の「最低限度」の仕様および品質の基準を決めるものであり、それを上回る場合の評価尺度が無いことと、明記されていないことに関しては施工会社各自の判断に委ねられることが課題でした。

2000年(平成12年)に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され、その大きな柱として「住宅性能表示制度」が設けられました。「住宅性能表示制度」は第三者機関が認証するもので、建物の客観的評価になります。新築住宅の場合10分野32項目に渡りますが、その中で建物の構造強度に関する性能は「構造の安定」という項目で評価され、その詳細は以下の通りです。

1-1   耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)

1-2   耐震等級(構造躯体の損傷防止)

1-3   その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)※免震建築物の評価

1-4   耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)

1-5   耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止):多雪区域のみ

1-6   地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法

1-7   基礎の構造方法及び形式等

この中の1-1~3が大地震に対する性能評価となり、これについて更に詳細に解説していきます。

耐震等級のランクとそれぞれの水準

 建築基準法では、極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震力(東京を想定した場合震度6強から7)に対して「倒壊・崩壊しないこと」、稀に(数十年に一度程度)発生する地震力(東京を想定した場合震度5強)に対して「損傷しないこと」を最低限度の構造強度として基準が定められており、「品確法」ではこれを「耐震等級1」として扱います。耐震等級は1から3まであり、等級2は1の1.25倍の力に耐えられ、等級3は1の1.5倍に耐えられることを基準としています。

これをまとめると下表のようになります。

耐震等級
(東京を想定した場合)
構造躯体が倒壊・崩壊

しない震度限界(1-1)

構造躯体が損傷

しない震度限界(1-2)

耐震等級1 震度6強から7 震度5強
耐震等級2 等級1の1.25倍の地震力 等級1の1.25倍の地震力
耐震等級3 等級1の1.5倍の地震力 等級1の1.5倍の地震力

※(1-3)で免震建築物であることが確認された場合、耐震等級評価は行わない。

そもそも、地震に関する基準は何があるのか?

建築基準法改正のきっかけ

日本で建設される建物の仕様および性能を決めるのは「建築基準法」です。幾度もの大地震で建物被害が報告されるたびに、その対策として耐震性能・仕様を向上させるべく、構造仕様基準の改正が繰り返されてきました。特に1978年(昭和53年)の宮城県沖地震(M7.4・仙台市で震度5)では死者16人、住居の全壊・半壊が86,010戸(仙台市HPによる)という多大な被害を及ぼしました。

それを受けて1981年(昭和56年)に改正された建築基準法では壁量や壁倍率の考え方が見直され、建物の構造バランスが考慮されるようになりました。また、保有水平耐力の考え方が導入され、構造は損傷しても倒壊は免れる、という人命を守る考え方が構造設計に取り入れられるようになり、それ以前の建物よりも各段に耐震性能の最低基準が引き上げられました。これを「新耐震基準」と言い、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請を受けた物件が該当します。

新耐震基準

「新耐震基準」は、前述のように極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震力(東京を想定した場合震度6強から7)に対して「倒壊・崩壊しないこと」、稀に(数十年に一度程度)発生する地震力(東京を想定した場合震度5強)に対して「損傷しないこと」を最低限度の構造強度として基準が定められており、それ以前に建てられた「旧耐震基準」の建物に比べて格段に耐震性能が違うことが、以降の震度7クラスの大規模地震(阪神淡路大震災・新潟県中越地震・東日本大震災・熊本地震等)の建物被害状況から実証されています。

品確法

 2000年(平成12年)に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」では、新耐震基準の現行建築基準法レベルの構造強度を持った建物を「耐震等級1」とし、それを上回る性能を持つ建物を等級2、等級3と評価し、消費者が建物を比較検討するための評価基準を定めたことが画期的でした。

耐震等級の調べ方

住宅性能表示制度

 新築住宅の場合、先述の「住宅性能表示制度」の適用は任意となりますが、購入に当たって特に何も表示が無ければ「耐震等級1」となります。これは、決して耐震性能が劣っているという訳ではなく、建築基準法適合レベル(震度6強から7で倒壊・崩壊しない)であることを示します。

耐震等級2・3を取得するためには

耐震等級2・3の認定を取得するには「住宅性能表示制度」を利用することになります。特に木造住宅の場合、全体の壁量を増やし建物の上下左右バランスよく配置する必要性があり、上階の耐力壁と下階の耐力壁の位置を出来る限り一致させる必要も出てきます。耐震等級3の取得を最優先で考えると、どうしても間取りの自由度が損なわれるというデメリットが生じる可能性があり、悩ましいところです。また、「住宅性能表示制度」を適用するには第三者機関の認証コストも発生します。間取りの自由度と費用対効果を考え、あえて「耐震等級1」に留める選択肢も大いにあります。

既存住宅の性能評価及び耐震診断

 既存住宅においても、建物の現況調査により新築と同様に「住宅性能表示」を適用させることができます。構造に関しては等級0~3まであり、新築と違い「等級0」があることが特徴です。「等級0」には、以下のような意味があります。

ア.   現況仕様及び図書等に基づく計算の結果、現在の建築基準法に定めのある関連する規定を満たしていない場合(建築基準法不適合)

イ.   目視や計測により、構造耐力に大きく影響すると見込まれる劣化事象等が

認められる場合(構造躯体の劣化による耐震性能不足)

また、「住宅性能表示」とは別に「耐震診断」による評価も有効です。「耐震診断」とは、1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準の建物を現行の新耐震基準と照らし合わせ構造の耐震性の検討・評価を行うものです。都市防災の観点から、旧耐震基準の建物に対しての耐震診断に補助金を支給する制度が多くの自治体でありますので、物件所在地の自治体にご確認ください。

耐震性

地震に強い家の4つのチェックポイント

強い地盤

建物が大地の上に建つ以上は、その土地の地盤の影響は避けて通れません。まずは物件の立地する土地の歴史と特徴を捉えましょう。

地盤の強度を決める大きな要素は「その土地が埋立地かどうか」です。埋立地は外部から持ち込んだ土砂でかさ上げをしており、軟弱地盤となりやすいです。締め固めに適切な工法と十分な期間を取らない場合は、長期に渡りジワジワと沈下していく「圧密沈下」が起こります。平均して下がる分にはまだしも、一部が傾きつつ沈下する「不同沈下」が発生した場合は床の傾きにより日常生活に支障をきたす恐れもあります。

過去の地図で田や河川、あるいは海であった場合は、埋め立てによる造成が行われており、かつ周囲より標高が低い低湿地である可能性が高まります。山間部においても、山の谷間や裾野を埋めて造成している場合もありますので、要注意です。

参考サイト:時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」

https://ktgis.net/kjmapw/

建物の直下地盤の強度や地下水位を調べるためには「地盤調査」を行います。住宅において一般的に行われるのは「SS(スウェーデン式サウンディング)調査」です。これは、ドリル付のロッドを一定の重さを掛けながら地面に差し込み、その抵抗力から地盤の強度を測定するもので、調査結果(概ね地下10mまで対応)には非常に信頼性があります。ハウスメーカーや工務店に依頼する場合は設計検討の流れの中で実施されますが、どうしても施工会社の主観が入りますので、施主が自ら第三者機関に公平な調査あるいはセカンドオピニオンを依頼する方法もあります。

地震に強い構造


 地震により建物へ掛かる力は、横方向揺れによる「水平力」です。その水平力に耐えるために「耐力壁」を設け、柱や梁の接合部が横揺れの力で外れて崩壊しないように「接合金物」で補強するのが一般的な住宅の耐震設計の考え方です。(鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は柱と梁のみによるフレームのみで検討することも可能)

 「耐力壁」はむやみやたらに増やせば良いものではなく、一部に偏っているとねじれの力が発生し、構造に悪影響を及ぼします。この偏り方を一定の数値以下に抑えるバランスを測るのが「偏心率」の考え方で、建築基準法では「0.15以下」と基準が定められていますので性能評価書等でチェックするようにしましょう。

 地震による「水平力」をしっかりと耐力壁に伝えるためには、「床剛性」が必要です。これは、2階以上の床の変形のしにくさを表す基準で、吹き抜けが多い建物はこの「床剛性」が取りにくくなります。その分の補強や対策が取られているかの確認も必要になってきます。

地震に強い基礎工法

建物の重さを地盤に伝えるために、基礎の強度も大変重要です。基礎には大きく分けて3つの考え方があります。

      独立基礎

柱の直下のみに基礎があるタイプで、鉄骨造や鉄筋コンクリート造等フレームで成り立つ構造で良く採用されます。その多くはコンクリートや鋼管による杭基礎となります。

      布基礎

柱の直下と耐力壁のラインを結ぶように連続してつなげた基礎で、コストバランスが良く、住宅では一般的に採用されてきた基礎工法です。

      べた基礎(耐圧盤基礎)

布基礎の弱点である「水平剛性の低さ」「不動沈下のしやすさ」に対策すべく、一般住宅でも近年採用事例が増えている工法で、布基礎を底盤でつなげて一体化したような形状をしています。面で建物を支える考え方となり、建物の重さが分散されるため、軟弱地盤にも対応が可能となります。

新築の検討時には、建物上屋の構造と地盤の特徴を組み合わせて検討し、最適な基礎工法を選定するようにしましょう。既存住宅においても、どのような基礎構造が採用されているかは必ず確認する必要があります。

また、過去の大規模震災時には建物上屋と基礎が外れてしまい、住宅の倒壊を招いたケースが多々ありました。建物上屋と基礎をつなぐ「アンカーボルト」の設置基準についても、住宅購入時には施工会社から十分な説明を受けるようにしましょう。

また、建物の重さを支えるために十分な地盤強度(地耐力)が、そのままでは確保できない場合、あるいは将来不同沈下を起こす恐れがある場合には「地盤改良」の検討が必要です。「地盤改良」は木や鋼管による「杭補強」、セメントミルクを削孔に流し込む「杭状補強」、セメント系固化材を土に混入する「柱状改良」や「表層改良」などがあります。

免振・制振装置の導入

 「耐震等級」は建物の構造強度を高めてで地震による横揺れ(水平力)に耐える「耐震」の考え方ですが、基礎と建物上屋をボールベアリングや免振ゴム等で絶縁して水平力を建物上屋に伝えにくくする「免振工法」、水平力をゴムやオイルダンパー等に吸収させる「制振工法」が、一般住宅にも採用されるケースが近年増えています。

 それなりにコストも掛かる工法ですが、現行の建築基準法が大規模地震時の建物の損傷をある程度許容する構造設計の考え方に基づいていますので、建物被害を極力抑える工法としては非常に有効です。

耐震に関する正しい知識を持ち、納得できる家づくりを

ここまで、住宅の耐震性能を様々な角度から説明してきました。住宅を検討するにあたっては、間取りや内装・外装の仕様、それに対するコストパフォーマンス等の生活視点で選びがちですが、住宅には災害時に人命を守るシェルターとしての大切な役割があります。耐震に関する正しい知識を持ち、納得できる家づくりを検討していきましょう。

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