住宅性能を示す「Ua値」快適な家づくりのために知ってほしい数値のこと

家を建てる

住宅性能を示す「Ua値」を聞いたことがあるでしょうか。

「Ua値」はより快適な住環境にするための指標です。

これから住宅の建築を検討されている方は、住みやすい家を作り上げるためにも知っておく必要があります。

ここでは「Ua値の内容」と「Q値とC値との違い」、「Ua値が良い住宅の魅力」などを紹介します。

本記事でUa値について理解し、住宅を建築する際に役立てましょう。

 

「Ua値」とは?

「Ua値」とは「外皮平均熱貫流率」の略称で、住宅内部の窓や壁から外部へ逃げる熱量を、建物の露出している面積で割り出した数値です。

1㎡あたりどれくらいの熱量が外部へ出ていくのかということです。UA値が小さいほど室内の熱が屋外へ出ていく量が少ないことを意味するため、暖かい家になることを意味します。

「Ua値」の算出方法

「Ua値」の計算は下記の方法で算出可能です。

UA値 [W/㎡・K]=温度差1℃あたりの建物全体の熱損失量 [W/K]÷外皮面積 [㎡]

上記の計算式は簡易計算であり、詳細値を求める際は、下記の熱損失量の合計額を算出する必要があります。

  • 屋根(天井)
  • 外壁
  • 窓やドアなどの開口部
  • 基礎

詳しくは設計士へ確認しすることをおすすめします。

なぜ「Ua値」を意識しなければいけないのか?

住環境を良くするだけでなく、Ua値は設計士からの建築主への説明が義務化されました。

現在の日本はカーボンニュートラルの実現を目標としており、Co2排出0を目指しています。建築関係は特にCo2の排出量が多いため、省エネ化と言われるエネルギーの削減が求められています。

2021年4月より義務化となったUa値の説明は、省エネ基準を満たしているかを建築主へ伝える必要があり、延床面積300㎡未満の住宅には必ず適合確認しなければいけません。

適合確認しなければ建築できない、違法建築物件にもなる可能性があるため、建築主は理解しておく必要があります。

「Ua値」はどれくらいが理想

下記の表は一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターが発表した地域区分別Ua値の基準値です。

地域区分 1・2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
代表都市 札幌 盛岡 松本 宇都宮 東京 鹿児島
Ua値 0.46 0.56 0.75 0.87

上記の数値を見てわかる通り、雪国である北海道や北東北エリアのUa値は低くなります。一方で暖かい地域のUa値は低くなるため、住宅の省エネ性能も地域によって差が生じます。

Ua値を下げる方法とは

Ua値が低ければ断熱性能が高まるため、Ua値を下げる方法はあるのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Ua値は「屋根(天井)」「外壁」「床」「窓やドアなどの開口部」「基礎」の熱損失量の合計を基に計算します。

上記の中で最も熱が逃げる場所は「窓」です。室内の熱を放出する場所のうち、48%が窓と言われてます。

つまり窓の数を減らす、窓を小さくすることでUa値を下げることにつながります。しかし窓の数を減らすと日当たりにも影響するため、できれば避けたいと思う方も多いでしょう。

その場合、窓の断熱性能を上げることが最も有効的です。空気層がある窓は熱伝導率が低いため、暖かい空気を逃しにくい特徴があります。

住宅の窓はメーカーの既製品がほとんどであるため、建築会社へ断熱性能の高い窓を依頼することでUa値を下げることにつながります。

住宅性能でよく聞く「Q値」と「C値」

住宅性能の一つである「Ua値」の他に、「Q値」や「C値」という言葉があります。

それぞれの指標の違いを理解していないと、自身が建てる住宅が、高気密・高性能であるか判断できなくなります。

ここでは「Q値」と「C値」の詳細を説明します。

Q値とは

Q値とは熱損失係数を示した数値ですが、Ua値とほとんど内容は変わりません。

Ua値の場合、床や天井、窓の面積をベースに計算しますが、Q値の場合は住宅の延床面積を元に算出されます。

また住宅に住んでいる方は換気を行いますが、Q値の計算では換気による熱損失も含めて計算しますが、Ua値は含みません。

一見Q値の方が詳細な数値を算出できると思われがちですが、延床面積が大きいほどQ値は小さくなるため、高く評価されてしまうデメリットがありました。

しかし2013年に省エネ基準の改正があり、より精度が高い熱損失を計算できるUa値が採用されることが多くなりました。

現在のハウスメーカーのほとんどがUa値で計算していますが、Q値を伝えられた場合、より数値が低い方が性能は高くなると認識しておきましょう。

Q値の算出方法

先ほど紹介した通り、Q値は延床面積で割り出して算出します。計算式は下記の通りです。

Q値 = 熱損失量(w/k) ÷ 延べ床面積(㎡)

近年ではUa値が用いられることが多くなりましたが、換気による熱損失や冷暖房の熱排出を考慮した断熱性能を知りたい場合は有効的です。

なお、推奨値は地域によって異なるものの、おおよそ「1.6W/㎡・K」前後です。

C値とは

C値とは住宅の気密性の高さを表す指標であり、相当隙間面積ともいいます。C値が低いほど住宅の隙間がなく、気密性が高いことを意味します。

気密性は建物が完成してからでないと測れません。事前に計算したとしても施工業者によってC値が異なるため、新築住宅が完成した後に専門器具で測定します。

つまり住宅完成後に測定したC値が高い住宅であった場合は、瑕疵のある住宅になるケースも考えられるため、建築主はC値を理解しておく必要があります。

住宅を建築する前は、建築会社がC値に対する考えを聞いておくのも一つの対策になるでしょう。

C値の算出方法

C値を算出する際は、専門器具を用いて測定しますが、計算式は下記の通りです。

C値=「住宅全体の隙間の合計面積÷延床面積」

例えば延床面積が80㎡(24.2坪)の住宅のC値が0.8㎠/㎡である場合は、100㎠の隙間があることを意味します。

C値が0であることが理想ではありますが、明確な基準値も定められていないため、建築会社によって数値が異なるのが現状です。

ただし、建築業界では0.5〜0.7に設定しているハウスメーカーも多いため、住宅を建築する前は建築会社に確認することをおすすめします。

Ua値が良いと住宅はどうなる?

Ua値の数値が低いほど住宅性能が向上するとお伝えしましたが、具体的なメリットはどのような点が挙げられるでしょうか。

ここでは3つのメリットとデメリットを紹介します。

Ua値が低いメリット

Ua値が低いことで下記の4つのメリットが見込めます。

Ua値が低いほど熱が逃げにくい

Ua値が低いということは、部屋の熱を外へ出さないことを意味します。

冬場などは暖房器具を用いて空間を暖めますが、Ua値が高い場合は寒さを感じることもあるでしょう。

そのため、先ほど紹介した地域ごとのUa値基準値を比較しても、雪が降る地域の方が数値が低い傾向にあります。

冷暖房の効率がよく省エネ効果が高い

熱を外に逃がさないということは、部屋の暖かさをキープできることにつながります。

近年のエアコン等は部屋の温度に合わせて自動調節してくれるため、Ua値が高いと稼働時間も長くなります。

しかし数値が低ければ、エアコンの稼働率も下がるため、省エネ効果が見込めます。

月々の電気料金などを抑えられる点は大きなメリットと言えるでしょう。

Co2削減につながる

断熱性能が高いということは冷暖房機器の使用頻度が減り、エネルギー消費量を抑えることにもつながるため、Co2の排出量軽減につながります。

地球温暖化の防止だけでなく、環境破壊保全にもつながります。

ヒートショックを抑えることも

ヒートショックとは、温度変化による血圧の乱高下によって健康被害が起こる現象です。特に高齢者の方は、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。

家の温度差が激しいとヒートショックが起きてしまい、最悪は死に至ることもあります。

しかしUa値が低く断熱性能が高ければヒートショックを抑える要因にもなります。

快適な住環境には断熱性と気密性が重要

住宅における断熱性と気密性はどれくらい重要であるかご存じない方も多いのではないでしょうか。普段日常では聞きなれない言葉であるため、いまいち理解できない方もいらっしゃるでしょう。

ここでは快適な住環境を送るために必要な断熱性と気密性について解説します。

断熱性とは

断熱性とは、外気の熱い空気や冷気を家の中に入れこまないよう遮断する能力を示すものです。

断熱性能が低い家は、夏場が熱くなりやすく、冬場は寒い部屋となってしまいます。快適な家にするためにも断熱性は無視できない指標です。

実際に北海道の住宅は断熱性能が高く、冬場でも家の中では半袖で過ごしている方も多くいらっしゃいます。

断熱性を高める2つのメリット

断熱性を高めることで2つのメリットが見込めます。

  1. 冷暖房費用を抑えることができる
  2. 結露が発生しにくいため、住環境が良くなる

冷暖房費用を抑えることができる

断熱性が高いということは、外気の空気を室内に取り入れないことを意味します。

つまり、夏場は外の熱い空気を家の中に入れないため、エアコンなどの冷房器具の使用量が減ることになります。

もちろん冬場も同様で、外の寒い空気を取り込みません。冷暖房器具の使用料を落とすことで、月々の電気料金を抑えることにつながります。

結露が発生しにくいため、住環境が良くなる

結露は、屋内と屋外の温度差によって発生します。断熱性能が高い住宅は熱が伝わりにくく、室内温度が一定に保たれるため、結露が発生しにくくなります。

結露が発生することで、カビやダニの原因にもなり、住環境を悪化させてしまいます。そのため結露を発生させないように断熱性を高める必要があるでしょう。

気密性とは

住宅における気密性は住宅内部と外部との隙間割合を指標としたものです。

気密性が高い住宅は隙間が少ない家を指し、外気を取り入れる割合も少ないため、快適な住環境になります。

いくら断熱性が高くても隙間が多い家である場合は、家の中が外の気温と変わらないということになるため、気密性も断熱性と同様に重要視されています。

しかし実際に住んでみると、自宅にどれくらい隙間があるかわからないものです。そのため多くの方が気密性を意識していないのが現状です。

気密性を高めるメリット

気密性を高めることで3つのメリットが見込めます。

  1. 断熱性との相性が良い
  2. 室内温度のムラがなくなる
  3. 外気の汚染物質を防ぐ

断熱性との相性が良い

気密性は断熱性と相性がよく、双方を高性能にすることで、より快適な住宅にすることができます。気密性が高いということは、外気の空気を取り込まず安定した断熱性能を維持できることを意味します。

しかし気密性が低ければ外の空気を取り入れてしまうため、いくら断熱性能が高くても快適な家とは言えないでしょう。

室内温度のムラがなくなる

気密性が低い家であると、各階や部屋によって温度差が生じます。

例えば洗面所や廊下だけ寒いなど感じることもあります。温度差のムラは、体の弱い人である場合は体調不良や風邪を引きやすくなったりと体に及ぼす影響もありますが、気密性が高ければ上記の影響は払拭出来ます。

外気の汚染物質を防ぐ

窓や玄関ドアから外気の汚染物質が室内に入ると思われがちですが、家の隙間からも入ります。

汚染物質にはさまざまあるものの、花粉や黄砂、PM2.5など粒子が細かいものも、気密性が低い家の場合は、隙間から入ってきます。

しかし高気密住宅では上記の汚染物質の侵入は抑えることが可能となるでしょう。

省エネ・快適な家づくり

今回はUa値に焦点を当て、Ua値の内容や他の住宅性能指標との違い、Ua値の家が良いと言われる理由を紹介してきました。

Ua値は住宅業界で使われる用語であるため、一般的には馴染みありません。しかし住宅を建築する際は、着目する必要があるでしょう。

Ua値が高い家である場合は、断熱性能が低下し、快適な住環境を送ることが出来なくなる可能性もあります。また気密性も意識しなければいくらUa値が低くても、快適な家づくりができたとは言えないでしょう。

近年のハウスメーカーは国策に合わせた省エネ住宅を建築しています。今後もUa値問わずエネルギー削減に向けた住宅の建築が増えて行くため、自身がマイホームを建築する際は、どれくらいの数値であるか確認しておくべきです。

 

関連記事

特集記事

TOP