DIP

北参道の家

取材作品

わがままを詰め込んだ、シンプルモダンな寛ぎ空間

宇都宮市内にある神社の参道沿いに建つKさん一家の住まい。装飾的デザインを極力抑えた、シンプルの中にナチュラル感のあるモダンな佇まいが特徴的だ。「実家を減築して自分たちの家を建てるなら、経年しても美しくあってほしかったんです」そう話すKさん。

玄関は、アプローチの距離をあえて長く取り、お客様をお出迎えする空間を演出するのと同時に家族の心が置換する場所として使われる。仕事から疲れて帰って来るとこの柔らかい灯りの空間がほっとした気持ちにさせてくれるし、朝お仕事に出かける際には「凛」とした緊張感のあるアプローチから仕事モードに心が変化してゆく事を考えての事である。 単調になってしまいがちな玄関から奥へと続く廊下の敷石には大谷石を配置している。これは既存の住宅を壊した際に出たものを削り直してリデザインしたもの。素朴な素材の大谷石の廻りはドイツ製の墨モルタルで仕上げている。

わざとランダムに置くことで、照明をつけたときに生まれる明暗差が、叙情的なムードになることを狙っている。明るすぎない引き算による照明効果。それもDIP佐山さんがプランニングをする際、頭の片隅に入れていることでもある。

玄関を入ると左手には、夫妻の趣味のための音楽室を配置。ご主人はヴィオラ、奥様はバイオリン、ご夫婦でピアノを弾かれる。お二人共、学生時代はオーケストラに所属していたほど、二人そろってクラシック音楽を嗜んでいるという。

家づくりにおいてこだわったことの一つに、気兼ねなく演奏できる音楽室を設けることがあった。「音楽室は遮音性が高く、音の反射や吸音を考慮した設計です。残響も適切で ご近所さんを気にせず思いきり練習できるのが魅力です」とKさん。

“狭い・低い・暗い”という防音室の一般的なイメージとは違い、“広い部屋・高く八角形をした天井・窓からの明るさ”を実現したこの部屋。ピアノを配置し、ゆとりに満ちた空間で音を心地よく楽しめる。開放感のあるこの部屋でなら気持ち良く楽器が奏でられるでしょう。

音楽室の反対側には、もう一つのこだわりであるライブラリーと呼ぶスタディスペースを設けている。このライブラリーには、お仕事の専門書がぎっしりと詰め込める大容量の本棚と、それを読むための机や椅子などが並ぶ。常にその知識は最新のものにアップデイトする必要があり、日々の勉強は欠かせない。

「一見するとシンプルなライブラリーですが、Kさんご夫妻の細かい要望がいっぱい詰まってます」とDIP佐山さん。

中央にワークデスクを、窓辺にはカウンターテーブルを設置。これはタモ材で造作したもので空間の大きさに合わせて設計しながらご夫妻の身体寸法に合わせた使いやすいテーブルとカウンターの高さになっている。 佐山さんが長く信頼を置く秀逸な木工家具職人による特注品で“契り(ちぎり)”による技 法を使っているものとか。 自分の納得のいく机をオーダーして、大切に使っていくのはモノを長く愛用していくこと につながっていく。

あまり見かけない「くの字」型デスクにしたのは、スクエア型より目線があいにくく、夫婦がお互い勉強していても集中しやすいからという理由。同様にちょっと気分を変えたい時に便利なのが、カウンターテーブルの存在。少し目線があがるだけで、リフレッシュでき、自然と背筋が伸びる気分に。“契り”を交わした夫婦のお互いを高める場所として、ぴったりの場所になっている。

2階に上がる途中には夫妻が旅行先で一目惚れしたお気に入りの絵画、印象派の巨匠クロード・モネの「睡蓮」が目を引く。これはフランスのオランジュリー美術館にあるモネの大作「睡蓮」 の大プレートをパノラマ展示するために構造された睡蓮特別展示室の飾り方をリスペクトしているという。

「階段の吹き抜け上部に配するトップライトから差し込む自然光で絵画の表情が変わるんです、とご夫妻。この美術館特有の湾曲する壁を再現するのは設計デザインも現場での施工も大変でした」とDIP佐山さん。

2階のLDKスペースは、白をベースとしたインテリアでシンプルにまとめられていて、リラックス感のある雰囲気。オープン型のキッチンは、カウンタースペースが取られていて、配膳台として気軽に利用できる機能的なつくりとなっている。またタスクアンビエント照明を採用。調理に必要な明るい照明だったり、料理を美味しく照らす照明など、明るさや照らし方を変えることで、機能はもちろんリラックスムードを演出するのにひと役買っている。

さらにはダイニングとガラスドア一枚でつづくリビングはワイドウィンドゥによってテラスとつながりひと続きの空間の様にも見える。テラスから公園の桜や夜景を望むことができるのも見逃せない。こちらも季節や時間によって、その表情を変え、見る人の心を優しい気持ちにさせてくれる。

そしてKさんが何よりも大切にしたのは、一日の疲れを癒してくれるお風呂だ。「バスルームはリラックスとラグジュアリーな気分を味わいたい」という要望に応え、最高級 浴槽のひとつであるArtisを使用。安らぎ空間を創造した。 まるで一日一組限定の隠れ宿に案内された気分である。湯船に浸かりながら夜空を眺められるバスルーム、深いくつろぎを得られる癒しの空間ができあがった。

「私たちだからこの家になったっていうものが欲しかった。あれもこれもと欲張りになってしまって決められなくて……。だから佐山さんに細かい要望を出し過ぎてしまい、随分と困らせてしまった気がします」こう語るのは奥様だ。

では、新しい自分たちの住まいへの熱い思いをどのようにして、Kさんご夫妻の思いはどのようにして具現化されていったのか。建築家のDIP佐山さんは、夫妻のライフスタイルやデザインの好みなどをじっくり聞き取ることで、目指すべき方向をつかんでいく。

「お施主様が求めるすべてのご要望をかなえることは難解な事です。だからこそ要望をひとつずつきちんと整理していくことが大切だと思うんです。どれだけ年月がかかろうがとことん向き合って 納得して家を建てていただきたい。今回も建築に至るまでに2年を越える長期プロジェクトとなりましたね」とDIP佐山さんは振り返る。

理想の住まいを手に入れたいと願っても、予算や土地の条件など、すべての望みを叶えることは難しい場合もあるだろう。そんなときに頼れるのが、DIP佐山さんのような建築家の存在だ。100%イメージ通りの注文住宅をつくるのは難しいことだけど、そんな家は確かにある。施主と建築家の間で揺るぎない信頼関係を構築できたら、それは理想の住まいづくりの第一歩なのかもしれない。

  • 作品名

    北参道の家

  • 所在地

    栃木県宇都宮市

  • 家族構成

    ご夫婦、ご兄弟

  • 居住年数

    1年

  • 延床面積・間取り

    176.37u(43.4坪) 5LDK

  • 居住タイプ・構造

    木造2階建て

  • 価格

    家づくり相談をいただいた方限定でお教えしております

  • ご趣味

    ピアノ演奏・弦楽器演奏・読書