DIP

アートのある100年住宅

取材作品

終の住処、大切な思い出とともに

日が落ちかけた夕方、温かみがある、雰囲気のいい灯に照らされている。今回ご紹介するK様宅だ。建築家のDIP佐山さんに提示された要望は、大きく分けて“耐震強化”、“快適な住み心地”、“趣味のアート作品との共存”の3つだった。

DIP佐山さんは、この3つの実現にあたり、K様御夫妻の暮らしに対する考え方と向き合う。「団塊世代のK様御夫妻にとって、この家はいわば終の住処。求めていたのは、孫やひ孫の代まで壊れることなく、100年経っても快適に住める家の住みやすさです。そこで、暮らしやすい動線を守りつつ、建材や採光などを工夫して、より快適に暮らせるよう考えました」

御夫妻の希望で、“耐震強化”のため構造材に重きをおき、壁式鉄筋コンクリート構造で建築。県庁を建築するかのようなレベルまで耐震強化を図っている。だが、それだけに留まらず、質感のほか調湿、断熱面などで快適さをアップさせる努力を怠らない。また、普通耐震性を考えると窓が少なくなるものだが、このお宅に関しては例外。構造設計士と共に窓割りを協議した結果、窓を多めに取りながらも鉄筋コンクリートの強度を残している。

「住宅密集地の場合は、外部の視線が気になるなどのハードルがありますが、良好な通風、採光を守りつつ十分な耐震性を得られるよう、開口のバランスはかなり気をつけました」(DIP佐山さん)

さらに計画にあたって、肝になったのが“趣味のアート作品との共存”。まずエントランスのアプローチからプランが始まっていく。

アプローチは家を訪れる人を迎え入れる大切な場所。アプローチには自然石を埋め込み、柔らかい曲線を描きつつ重厚感のあるデザインに。ダーク色のアイアン柱を配置することで圧迫感を軽減し、プライバシーを守りながらも重くなり過ぎない高級感のある印象に仕上げている。

話し合いながら、ステンドグラスがはめ込まれた玄関扉を。訪れた人を楽しませる。そんな仕掛けをDIP佐山さんは提案した。

「玄関は100年住宅というコンセプトのもと、老舗木製建具メーカーが展開する日本製(made in Japan)の木のドアにしました。木材ならではの豊かな質感や表情は様々な年代のゲストを迎えるのにぴったりでしょう。ステンドグラスもK様御夫妻の大切なこだわりです。数多くの絵画コレクションとともに、家づくりのたいせつな部分として、コンセプトとなっています」。

DIP佐山さんの言葉通り完成したK様邸は、御夫妻にとって大切なコレクションの数々が、あちこちに飾ってあり毎日の暮らしの中で目に触れる。玄関の丸いステンドグラスを筆頭に、部屋の至るところにしつらえられている。家全体として作品がいきるようにするためには、DIP佐山さんの建築家としての働きが欠かせなかった。

中でも目を引くのが3Fのエレベータを降りて正面にある木彫りの壁装飾だ。これは、K様御夫妻が御父様の形見としてずっと大切に持っていたもので、中国の伝統のある美術品である。

元々は屏風として旧宅の応接室にて仕切りや装飾として用いられており、この家のために蘇った作品と言えるかもしれない。紆余曲折をへて、K様御夫妻の感覚が反映されたインテリアとして別のところで生きることになった。

一方で、和洋折衷された雰囲気もK様邸の特徴だ。リビングダイニングのテーブルや椅子は、品のよいデザインで知られるヨコハマクラシック家具の「ダニエル」。その手仕事の素晴らしさは、茶色いフローリング、そして白い壁面とほどよくマッチしている。

動線を十分過ぎるほど広くした大理石のシステムキッチンは、吊戸棚もなく実にシンプル。大容量の収納でごちゃごちゃしがちなキッチンをスッキリ広々。作業スペースが広くなって、毎日の料理も捗るに違いない。

1階に位置する客間と書斎の窓越しには、2つのテイストの庭がある。目を向けると、客間からは日本庭園風、もう一方はヨーロッパの様なディテールが用いられ、南欧の邸宅のような心地よい非日常感に包まれる。

「家を建てるうえで一番大切なことは、信頼できる建築家との出会いだと思います。その点私たちは、もともと佐山さんを知っていたのですからラッキーでした。おかげで妥協せず、こだわったものを作れました」と、最後にK様御夫妻はこう語ってくださった。

  • 作品名

    アートのある100年住宅

  • 所在地

    栃木県宇都宮市

  • 家族構成

    ご夫婦

  • 居住年数

    2年

  • 延床面積・間取り

    319.64u(96.78坪) 4LDK

  • 居住タイプ・構造

    RC造

  • ご趣味

    旅行