DIP

三夜通りの家

取材作品

優しい光と爽やかな風が、世帯感をほどよくつなぎ、優しく見守る

栃木県第2位の人口を擁する、栃木県小山市。そのJR小山駅西口に昔ながらのお店が並ぶ商店街、三夜通り商店街がある。今から10年ほど前、もともとこの場所に建っていた我が家を建て替えたという坂下邸。中庭を囲うようにそのスペースが全ての居室をつなぎ、家族の気配も感じられるよう建物を配置。中庭から光を取り込み、吹き抜けが気持ち良い快適で明るい住まいだ。

建て替えにあたっては、設計事務所に建ててもらいたいという要望があり、まず良いなと思った会社を見つけたらホームページや雑誌を見て問い合わせ、徐々に絞っていたという坂下さん夫妻。「埼玉県の川口で一戸建てを買って住んでいたのですが、そのときはあまり住み心地が良くなかった経験があるので、しっかりと家を建てたかったんです」。

「最終的に手前共に決まった最大の理由は、三夜通りという特殊な立地の中で周りの景観に合わせてつくることを大切にしたプレゼンの結果だと思っています」とDIP佐山さんは話す。

今回の家づくりでもっともこだわったのは「住みやすさ」。 二世帯で暮らすためそれぞれの世帯のプライバシーを確保すること。同時に通りに面しているため、一般通行者への配慮も必要だった。

仕上がったのは、坂下さんが思い描いた以上の楽しい住まい。丁寧に作り込まれ、外観からして家族のみならず前を通る人を驚かせる要素がいくつも盛り込まれている。

この土地の一番のお悩みポイントとして、周辺の生活道路となっている前面道路がある。北側に面しているこの道路と建物の間に広いスペースを取りづらい立地条件だ。それに対してDIP佐山さんは、和の趣を持つツガ材の格子戸を設置。道路に対して開口部をつくらず、風格あふれる引き戸の長屋門が周りの住宅とのデザインと一線を引く、まるで料亭と見紛うような空間をつくり上げていく。こうして、立地条件の苦しさをユニークなアイデアでカバーすることで、雑多な通りの喧騒が全く気にならないようになったのである。

中に一歩入れば、向かって左が親世帯、右が子世帯になった玄関分離型の二世帯住宅。生活音などお互いに気を遣わずにすむ間取りを提案している。世帯間の距離感をどうとるかというのは、二世帯住宅を建てる際のひとつのポイントだ。お互いに気を遣いすぎることなく、でも自然な交流を可能に。そんな心地良い距離感を目指した空間構成になっている。

敷地中央にはどこからでも見渡すことのできる中庭を計画。緩やかに全ての空間が繋がり、南、東、西の3方向に全ての隣地に建物がある限られた面積の中、プライバシーと光、採光、通風の確保に成功した。元々あった夏椿をシンボルツリーとして残し、自然の豊かさや開放感を得ながら暮らしの楽しみを感じられるようにしている。隣家や通りからの視線を気にせず自由気ままに、小さなお子さんを遊ばせることも可能だ。中庭を挟んでおじいちゃんおばあちゃんが孫と遊んだり、気軽に様子を見に行ったり、世帯間の交流も盛ん。家族の気配を互いに感じながら心地よく過ごせる距離感となっている。

また、高さ違いの屋根がいくつも連なっているような形も独創的。周囲に溶け込むと同時に、プライベートを守る住宅となっている。屋上からは花火が見え、夏は家族で花火鑑賞を楽しむこともあるという。

「現在奥様は、この家でお習字教室を開いているとのこと。人柄の良い奥様なので、近所の子どもたちから人気のようですね。あとは、夕方や夜になって中庭の照明が点灯すると、ちょっと雰囲気のいい割烹料理店だと思って間違えて入ってくるというお話をうかがいました。ある意味こちらの狙い通りなので、そんな話が聞けて嬉しいです。いまは近所でも評判となっているこちらのお宅ですが、建て替え前は難しい条件が多く、とてもやり甲斐を感じるお仕事でした」と話すDIP佐山さん。

以前の家からいまの家になったことで、暮らしまでが上質で豊かになったと笑顔を見せる坂下さん。夜の帰宅路、ライトアップされた格子戸から漏れる灯りに誘われてその扉を唯一くぐれるのは坂下さんファミリーのみ許された行為。自然の風を感じながら家に入るその瞬間、一日の疲れがスッと癒されていくのだろう。

  • 作品名

    三夜通りの家

  • 所在地

    栃木県小山市

  • 家族構成

    ご両親・ご夫婦・お子様2人

  • 居住年数

    12年

  • 延床面積・間取り

    134.26u(40.65坪) LDK×2+3部屋

  • 居住タイプ・構造

    木造2階建て

  • 価格

    家づくり相談をいただいた方限定でお教えしております

  • ご趣味

    書道・旅行