【2022年】いつまで続くウッドショック。原因と今後の見通し

お役立ち情報

ウッドショックという言葉を聞いたことがありますか?ウッドショックは近年、建設業界で大きな問題として語られている世界的な現象です。なぜこのような言葉が生まれるほど、注目されているのでしょうか。

この記事では、ウッドショックの概要と要因、影響と対策を解説します。

ご自宅を建築中ですでに影響を受けられている方や、これから新しい家を建てたいと考える方にも参考になる情報ですので、ぜひ最後までご覧ください。

ウッドショックとは

はじめに、ウッドショックとはどのような現象か、概要についてご説明します。

供給不足による木材価格の高騰

ウッドショックとは、木材価格の異常な高騰現象のことを指しています。

世界的な供給不足が発生したことで、木材価格が短期間で急激に上昇し、世界中の建設業界は深刻な木材不足におちいりました。ほとんどの木材を輸入材に頼っている日本も、大きな影響を受けています。

住宅やマンション、さまざまな建造物を建てるとき、建物の土台などで木材は欠かせません。特に日本の住宅には基礎だけでなく部材にも木材が多く使用されるため、深刻な状況となっています。

ウッドショックの要因は、ひとつではありません。日本だけでなく、世界中で起きている多くの問題が複雑にからみ合い、ウッドショックを引き起こしています。ウッドショックの影響は現在建設中の住宅にも及んでおり、工期の大幅な遅れや使用予定だった木材の変更など、さまざまな対応がなされています。

オイルショックになぞらえた名前

ウッドショックという言葉は、1970年代におきた「オイルショック」になぞらえて生まれました。オイルショックは中東地域での戦争や紛争が要因でした。日本だけでなく、世界中で石油不足がおき、大きな混乱を招きました。

ウッドショックの要因も、世界中で起きたさまざまな問題が同時に噴出したという意味では、オイルショックと同じ現象と言えるでしょう。

2021年から見られる

ウッドショックは2021年3月頃から始まり、5月にいったんピークを迎えました。最初のピークでは木材価格が通常の4倍にもなり、世間でも話題になりました。ピーク時には40坪の建築費用が200万円以上も上昇しました。

2021年12月頃から再び木材価格が上昇し始め、2022年になっても価格の高止まりが続き、いまだに高騰が続いています。

ウッドショックの引き金となった原因

なぜ、このような世界的な木材の供給不足が起きたのでしょうか。ここではウッドショックの原因を解説します。

輸入材に依存していた

日本では、これまで輸入木材を多く使って住宅を建てていたことが、ウッドショックの影響を大きくしています。

日本の木材自給率は40%程度で、カナダ、アメリカ、北欧、中国、東南アジアの輸入材などに頼ってきました。

日本は豊かな森林をもつ国であるのに、なぜ国産の木材ではなく、ほとんどの住宅建築で輸入材が使われているのでしょうか。日本は第二次世界大戦で国内の森林を大幅に失い、戦後は国産木材が大幅に不足したことから輸入材に頼るようになりました。その後も安価な輸入材を使いながら、日本のハウスメーカーは住宅建築ラッシュを支えてきました。

近年、国産材の割合を増やす政策は行われてきたものの、ウッドショックによる急激な需要の変化に対応できるだけの環境は、未だ整っていません。これまで国産材業界を育てずに安価な輸入材を選択してきたことが、日本でのウッドショックの影響を大きくしています。

新型コロナウイルスの影響

ウッドショック最大の引き金は、世界中でおきた新型コロナウイルスのパンデミックです。

新型コロナウイルスは、多くの人々の生活そのものを大きく変えました。海外各国では都市がロックダウンし、日本でも緊急事態宣言が発令され、家の外に出られないという前代未聞の状況に直面しました。ネットワーク環境の恩恵からリモートワーク化が進み、買い物はネットショッピングが主流となり、宅配サービスが次々と生まれました。

世界で同時に生活スタイルが変化するという異常事態が、多くの労働環境に影響をおよぼし、ウッドショックをも引き起こしたのです。

製材工場の稼働率低下

新型コロナウイルスの影響で、世界中の製材工場が人員が配置できず、稼働率が大幅に低下したことも原因のひとつです。

生産工場を抱えるさまざまな業界で、外出禁止令により工場を完全にストップせざるおえなくなり、世界中で生産活動が大きく停滞しました。

ネットショッピングの増加とロックダウンによるコンテナ不足

新型コロナウイルスの影響で起きた原因のもうひとつは、いわゆる巣ごもり需要によるネットショッピング市場の拡大とコンテナ不足です。

ネットショッピングが爆発的に増加しているにもかかわらず、海運業界では大規模な作業員不足が発生しており、世界中でコンテナ生産が追いつかないという大混乱がおきました。コンテナを積みたくても積めないという状態になり、運賃も過去にないほど高騰しました。それにより、新型コロナウイルスの発生前に買い付けていた輸入材が日本に届かないといった現象も起きてしまいました。

アメリカや中国での木材需要の高まり

アメリカでは停滞した経済回復のために、2020年3月からゼロ金利政策を打ち出しました。その後押しにより住宅需要の拡大が促され、新築ラッシュで木材の需要がいっきに高まりました。

中国は新型コロナウイルスからの回復が先進国よりも早かったために、もともと国内需要が高かった木材の調達を、先進国に先駆けて開始しました。その調達力は東南アジアの木材を買い占めるほどで、他国の木材不足に影響を及ぼしています。

日本はアメリカや中国の調達力に圧倒され、急激に木材不足となりました。

リモートワークなどで自宅の改修や新築の需要が増加

新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中で人々の生活スタイルを大きく変化させました。日本に限らず、リモートワークが当たり前になったことで快適な住宅が求められるようになり、新築やリフォームの需要が急激に高まっています。

欧米ではDIY文化が根づいており、床板を張り替えるなど簡単な作業に使える木材の需要も大幅に伸びています。

アメリカの山火事やヨーロッパの虫害

ヨーロッパやアメリカでは以前から深刻な虫害が発生していました。虫害は地球温暖化と関係していると報告されています。

温暖化による気温上昇は虫の発生を助長するだけでなく、樹木そのものを弱らせます。虫の大量発生にともなって増える死骸はカビの温床となり、弱った森林を腐らせる被害が発生しました。これが遠因となって木材供給にストップをかけています。さらに枯れてしまった樹木は乾燥し、山火事が起きやすくなります。

アメリカでは近年、こうした虫害と乾燥した気候が相まって、山火事が過去にないほど多発しています。2021年12月の「マーシャル火災」では、1000軒以上の住宅を含めた約24平方キロメートルが消失しました。こうした状況によりアメリカ政府は木材伐採制限を実施し、世界的な木材需要に大きな影響を与えています。

ロシアの全面輸出禁止(2022年)で世界的な木材不足

ロシアは以前から、2022年からの原木輸出禁止政策を打ち出していたため、日本では輸入ストップに対する準備が進んでおり、今のところ影響は及んでいません。

2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で、ロシア・ベラルーシに対し日本政府は全面輸出入禁止を発令しました。今後ロシアのウクライナ侵攻が長引くと、世界中のサプライチェーンで影響が深刻化し、ウッドショックへの遠因が増える可能性はあるでしょう。

ウッドショックの収束はまだ見えていない

2021年から始まったウッドショックですが、2022年5月現在でも収束の見通しはついていません。なぜ収束できないのでしょうか。

短期間での収束は難しい

木材の価格高騰はピークを過ぎたようではありますが、まだまだ収束とはほど遠い状況にあります。

アメリカの新築ラッシュは2021年7月頃から減少傾向になりつつありますが、いまだに需要は高止まりしています。海運業界も徐々に回復しつつも、コンテナ不足はまだ続いています。コンテナ不足、輸出入の停滞によって建築資材である金属部材も価格上昇しており、今後も建築価格への影響は続くことが考えられます。

経産省も当面は続くと考えている

経産省で提示している輸入材価格や国産材市場の動向を見ると、2021年10月ごろが輸入材価格のピークで2022年では少し減少の動きは見られるものの、輸入材も国産材も価格は高止まりしています。

経産省の見解では、木材全体の価格上昇は止まりますが、木材の種類によっては価格の高止まりが定常化するとしています。それにより、新築戸建の動向も徐々に変化していくでしょう。

ロシア・ウクライナ危機による供給不安と影響範囲

前述したように、数年前からロシアは原木の輸出禁止政策をとっていたため、日本には今のところ大きな影響は出ていません。

国際機関では、ロシアやベラルーシの木材を軍事的に使用させないための措置が行われ、バイオマスや木材チップなどの木材資源を使用する業界への深刻な影響が懸念されています。

ロシアによるウクライナ侵攻も先が読めないため、ロシアやベラルーシの木材輸出の全面禁止措置が、今後どの方面にどのくらいの規模で影響を及ぼすか、予測は難しいでしょう。

家づくりのタイミングを検討する

これから新築やリフォームを希望される方は、ウッドショックの影響下で、どう対応すればよいでしょうか。

基本は入居したい日に合わせること

これから新築やリフォームを希望するならば、ウッドショックのために建築時期を延ばしたり購入を諦めたりするのではなく、ご家族が新しい家に入居したい日に合わせて、建築プランを立てることをおすすめします。

ウッドショックの原因は複雑に絡み合っており、何かのキッカケで再び木材の価格高騰が起きてしまうのか、今後どのタイミングで木材供給に変化が起こるのかは予測できないからです。

そんな不確実なことよりも、ご家族の建てたい時期を優先することを考えましょう。さまざまな情報を知ることも必要ですが、家づくりのタイミングは生活の変化に関わることなので、ご家族の気持ちに合わせることが大切だからです。

他の原材料なども関係する住宅価格

ウッドショックで木材の価格高騰は起こりましたが、それは住宅価格の一部でしかありません。

新型コロナウイルスや地球温暖化、ロシア・ウクライナ危機など、世界中の多くの問題は、木材だけでなく燃料や金属部材、円安などにも影響を与え、住宅価格を上昇させています。これらの価格が、一部は高騰する以前の状態に戻るかもしれませんが、ほとんどが以前の状態に戻るのは難しいでしょう。

これからの住宅価格は、これらの環境をふまえて推移していくと予想されます。

柔軟な対応ができているのであれば検討を始めてOK

これから新築の家を購入するならば、ウッドショックの影響はまだ続くことが予想されるので、工期スケジュールや価格の変動に対して、ハウスメーカーに相談しながら幅を持たせることも検討しましょう。木材以外の建材についても目を配り、ハウスメーカーといつまでに何ができるかを明確にしながら契約を進めるとよいでしょう。

ハウスメーカーによっては特定の部材を大量購入して備えていたり、値上げの上限を設定している場合もあります。ウッドショックへの対応はハウスメーカーによってもかなり異なるため、どのくらいの予算でどんなプランを提示してくれるのかを確認するとよいでしょう。

購入を焦らず予算に合わせたプランを作成しましょう

この記事では、

  • ウッドショックの概要
  • ウッドショックの引き金となった原因
  • ウッドショックの収束時期
  • 家づくりのタイミングを検討する

について解説してきました。

新型コロナウイルスの影響は徐々に解消されていきそうですが、ロシア・ウクライナ危機、中国の経済成長と東南アジアへの動向など、世界情勢や地球温暖化の影響などは、先が読めない問題です。

2022年5月、日本政府はウクライナ侵攻によるロシアへの経済措置強化を決定し、その対応策として、輸入材から国産材へ切り替えるための補助額を支給すると発表しました。このことから、国産材の需要が高まる可能性がでてきました。これまで輸入材に頼っていた日本の建設業界の体質や雇用に、どのような変化をもたらすのか、今後も目が離せません。

ウッドショックの収束はすぐには期待できませんが、国産材と輸入材の割合が徐々に変化し、新築住宅建築に関連するさまざまな環境も変わっていくのではないでしょうか。

住宅購入はご家族にとって、生活環境が変わる大きな転機です。1番よいタイミングに購入し、ご家族の生活にあった住まいづくりを実現してください。

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