憧れの吹き抜けには思わぬデメリットが!失敗しない家づくりのポイント

家を建てる

注文住宅の展示場や施工例の写真を見て、吹き抜けの家に憧れる方も多いのではないでしょうか。また、建築予定地のまわりが都市部の住宅密集地で、採光や風通しの解決策として吹き抜けにするかを迷われている方もいるでしょう。

吹き抜け空間のある家は、吹き抜けのない家でイメージしていた部屋数や生活スタイルから大きく変わる可能性があり、設計段階から考える項目が発生します。

この記事では、吹き抜けを採用した場合のメリット・デメリット、デメリットを解決する方法をご紹介します。

吹き抜けの特徴を理解して、明るく開放感のある快適な家を手に入れましょう。

開放感が魅力の吹き抜け

はじめに、吹き抜けのある家とはどのような家をいうのかをご説明します。

上の階との間に天井や床がなくつながっている家

吹き抜けのある家とは、上層階の一部の床面積を減らし、1階または下の階と縦方向に連続した空間がある家のことです。2階建ての住宅の場合、2階の床面積を減らし、1階から天井までひとつづきの空間を持たせた空間がある家を指します。

外国の映画やドラマなどで、玄関ドアを開けると吹き抜けになっていて、壁際に階段がある住宅を見たことがあるのではないでしょうか。他にも、玄関ホールが大きな吹き抜け空間で、中央に大階段がある大邸宅も出てきますよね。

海外では断熱性の高い住宅の多さや地震災害の少なさから、吹き抜けを採用することはかなり以前から一般的でした。

日本ではここ数年の生活スタイルの変化や断熱材の改良が進んだことから、吹き抜けの人気が高まっています。

天井が高くなり広々とした印象に

吹き抜けのある家は、通常の2倍の天井高がある空間があることで、視界が開けて一段と広く感じられるのが特徴です。なぜなら1階にいながら2階の天井が見えると、固定概念から解放され、天井がより高く見えるからです。

部屋の一部がかなり大きな空間となり、一般的なスタイルの家にはない、インパクトのある印象を受けるでしょう。

商業施設やマンションのエントランス

吹き抜けは商業施設やマンションのエントランスにも、かなりの頻度で採用されているデザインです。

商業施設で使われる理由は開放感を提供できることや、下の階からも上の階からも店舗や人々の流れ、活気を一望できるからです。

マンションの顔であるエントランスでは、玄関から部屋に至るまでのアプローチ空間の演出として使われています。

開放感・高級感を演出できる

吹き抜けは開放感や高級感のあるデザイン演出としても採用されます。空間の広さや視線の高さを使うことによって、デザイン性を強く印象づけることができるからです。

商業施設やマンションだけではなく、一般住宅にも開放感や高級感は演出できます。注文住宅では、高級ホテルやオシャレなカフェのような家づくりに、吹き抜けのデザインが採用されています。

吹き抜けには弱点もある

吹き抜けを選択する前に、こんなはずではなかったと後悔しないためにも、知っておくべきデメリットをご紹介します。

2階は狭くなる

吹き抜けの間取りは2階の面積を減らすことになるので、2階の部屋数が制限されます。

今後ご家族が増えたり、子供部屋が必要になったりする可能性がある場合、吹き抜けにしたことで部屋数が足りなくならないよう、間取りを検討しましょう。

部屋数も確保したい、吹き抜けもつくりたいということで、吹き抜けのサイズを小さくする方法もあります。しかし、サイズが小さすぎて開放感や採光が実現できないのであれば、吹き抜けをつくる意味がなくなってしまいます。

これから新しい家で、ご家族がどのような生活を送りたいか、本当に吹き抜けが必要かを明確にしてから、設計を進めることをおすすめします。

音やニオイは広がりやすい

2階の寝室で寝ているとき、1階の生活音が気になる経験はされたことはあるでしょうか。吹き抜け空間は1階と2階がつながっているため、1階に天井がある家に比べて音はダイレクトに伝わります。

リビングのテレビの音や話し声が、2階の寝室に響いてしまい、睡眠が妨げられる可能性があるため、設計段階から対策が必要です。同じように、ニオイも1階から天井に向かって上昇します。特に温められた空気は天井付近にたまりやすく、キッチンでの調理のニオイが2階にも広がってしまいます。キッチンを吹き抜けのある場所とは分ける、半個室にするなどの工夫を検討しましょう。

光熱費は割高に

日本の住宅建築では、以前にくらべて断熱材を使用する住宅が増えたため、寒さへの対策は進化しつつあります。それでもやはり空間が広い吹き抜けのある空間は、「夏暑く、冬寒い」状態になりやすいでしょう。

吹き抜けのある家は夏は日差しがよく入るために部屋が暑くなりやすく、冬は暖かい空気が天井付近にとどまり、床面には冷たい空気がたまって寒くなるからです。

  • エアコンの畳数ランクをあげる
  • シーリングファンやサーキュレーターを使用する
  • カーテンやロールスクリーンで仮の天井をつくる
  • 天井付近の窓を小さくする
  • 天井付近の窓にカーテンをつける
  • 床暖房をつける

などの対策がありますが、設計の段階からどこで工夫できるかを考える必要があるでしょう。

メンテナンスが手間

天井付近の窓やシーリングファンの掃除、照明器具の電球交換など、脚立にのぼってメンテナンスするのには限界がありますし、危険をともないます。掃除は専門業者にお願いしたり、LED電球で交換回数を減らすなど、メンテナンス費用がかかることも念頭に入れておくとよいでしょう。

強度面の不安

吹き抜けの部屋をつくると、耐震性が下がる可能性があります。なぜなら2階の部屋数を減らしたことで柱の数が減り、2階の床面積が少ないと耐震性性能が減少するからです。

さらに、吹き抜けを楽しむために大きなガラス窓を設置すると壁の強度も弱くなります。耐震性を高めるためにどんな工夫ができるか、設計段階からハウスメーカーや設計士に相談しましょう。

個々のプライバシーは少々守りづらい

吹き抜けのある家は開放的であることから、ご家族がどこにいるかが見えてしまい、プライバシーは確保しづらくなります。個室を活用してご家族のちょうどよい距離感を保てるように工夫をしましょう。

吹き抜けに大きなガラス窓を設置する場合は、外観もデザイン性のある家になり、通行人からの視線を集めてしまうでしょう。植栽やエクステリアなど、外からの視線をさえぎる対策をおすすめします。

吹き抜けにはメリットもたくさん

ここでは吹き抜けをつくるメリットをご紹介します。

開放感

吹き抜けを採用するいちばんのメリットは、開放感のある空間を手に入れられることです。1階から天井までの突き抜ける高さは、横の空間の広さよりも印象的で、よりスケール感を感じるからです。

たとえ狭い床面積の家でも吹き抜けを採用することで、広々とした空間をつくりだすことも可能です。

自然光が入る

吹き抜けを採用すると、冬でも明るい日差しが降り注ぐリビングで過ごすことができます。通常は2階の窓から入った日光は2階の床に反射して遮られますが、吹き抜けの空間では障害物がないため1階まで採光できるからです。都市部の住宅密集地でも、吹き抜けを使うと効率よく日光を取り入れることができます。

部屋が明るいと気持ちも明るくなり、健康的な居心地のいい家となるでしょう。

風通しが良い

天井付近の窓と1階の窓を開けると、上昇気流ができて風が通りやすくなります。自然に空気の流れができるので、空気が循環し続ける気持ちの良い空間をつくります。シーリングファンやサーキュレーターを使えばさらに循環が早まり、濁った空気をすぐに換気できるでしょう。

都市部の住宅密集地での風通しの悪さも吹き抜けで解決できます。

おしゃれな空間づくり

吹き抜けはデザイン性とインパクトを演出できる空間です。一般住宅や建売新築物件では数が少ないこともあり、おしゃれに見えるでしょう。

吹き抜けの空間には開放感と明るさがあるので、インテリアが映える環境もつくり出せます。こだわりの家具や小物を置いたり照明器具を使って、こだわりのある空間を演出しましょう。

家族とのコミュニケーションが取りやすい

吹き抜けの空間では、どこにいてもご家族の気配が感じられます。1階と2階でゆるやかなつながりを持つことができるためです。

開放的で明るいリビングは人が集まりやすく、ご家族がそれぞれ適度な距離を保ち、コミュニケーションが取りやすい環境をつくります。2階の個室へいく階段をリビングに設置するデザインも人気があり、吹き抜けの上からも下からもご家族の顔が見える家となるでしょう。

吹き抜けは機能性がポイント

吹き抜けにはデメリットもありますが、工夫をすれば快適な空間づくりが可能です。ここではデメリットをカバーするための具体的な方法を紹介します。

強度が第一

耐震への強度を高くするために必要なことは、2階の床の位置と面積、柱の位置が大きなポイントとなります。耐震機能の高い壁をもつ住宅でも、水平面である床面が小さすぎると強度が弱くなるからです。

解決策としては、ハウスメーカーや設計士に耐震評価をお願いすることです。できるだけ細かい構造計算による評価をしてもらい、床面積や構造的な問題を解決する方法があるか、相談してみましょう。

その結果、思っていた以上に吹き抜けの空間が小さくなってしまうかもしれません。その場合は「吹き抜けをつくることが本当に必要か」を再考してください。

ご家族の安全な生活を最優先することが、豊かな暮らしを送るうえで1番のポイントになるからです。

シーリングファンで換気・空調をしっかり

夏は暑く、冬は寒くなりやすい吹き抜け空間。光熱費を抑えるための対策は、吹き抜け特有の空気の流れを上手にコントロールすることです。

吹き抜けでは、1階から2階の天井に向かって暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降します。その空気を拡散・循環させるために、天井にシーリングファンを設置するのがおすすめです。

ニオイが天井付近にたまってしまうのを防ぐためにも、空気の流れをつくりましょう。なぜなら、高低差のある1階の窓と2階の窓を開けることで空気の循環が起きやすくなり、自然に空気の流れができるからです。たとえ天井付近の窓が小さくても、空気の循環は起こり、室内の自然換気が可能になります。

設計の担当者に、デザイン性だけではなく機能性に優れた窓の位置や大きさを相談しましょう。

LED電球でメンテナンスをへらす

吹き抜けの天井に設置した照明がある場合、電球の交換についても事前に準備しましょう。天井付近まで登れる脚立を用意して、ご家族の誰かが交換するのはとても危険ですし、今後やり続けられるとは限りません。

解決方法はLED電球を使うことです。寿命が長いLED電球を使用することで交換の頻度を減らし、たとえ専門業者に頼むことになっても回数を少なくできます。他にも、手元のボタンで操作できる電動昇降タイプの照明も販売されているので、照明メーカーの商品をチェックしてみましょう。

電動昇降タイプは、照明を自分の好きな位置まで降ろして電球交換ができるため、天井のある部屋で手を上にあげながら電球を交換するよりも、より安全に作業ができます。

他にも照明器具は天井につけることにこだわらず、壁に設置するタイプ、フロアライトやデーブルライトなどの間接照明も取り入れてはいかがでしょうか。

寝室の壁やドアは防音性の高いものに

吹き抜けのある家は天井にさえぎる床がないため音が伝わりやすく、人によっては思った以上にうるさく感じられるかもしれません。音に敏感なご家族がいる場合は、しっかり防音対策をする必要があります。

寝室の位置を、吹き抜けのある空間から遠くへ設置できるか設計担当者に相談しましょう。防音壁や防音ドアを採用するのもおすすめです。

ご家族の日々の生活スケジュールについて話し合い、一人ひとりの睡眠時間や生活リズムを見直すのもよいでしょう。

おしゃれで快適な吹き抜けを実現するために

この記事では、

  • 吹き抜けの魅力とは
  • 吹き抜けの弱点(デメリット)
  • 吹き抜けのメリット
  • 吹き抜けは機能性がポイント

をお伝えしましたが、吹き抜けのメリット・デメリットをお分かりいただけましたでしょうか。

吹き抜けのある家は、モデルハウスや展示会場で実物を見ると、一瞬で心をつかまれてしまうほど魅力的な空間です。吹き抜けによる開放感とデザイン性は、一般的な住宅デザインでは、なかなか味わえないからです。

吹き抜けのメリット・デメリットを理解したうえでデメリットをどう解決するか、ハウスメーカーや設計士に相談しながら快適で理想的な家づくりを実現していきましょう。

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