建ぺい率とは?容積率とは?計算方法と建物の規制を解説

家を建てる

住宅を建てるときに、多くの人が目にする「建ぺい率」や「容積率」ですが、正確な意味を知っている人は少ないのではないでしょうか。
住宅のサイズは自分に所有権のある土地でも、好きに大きさを決めて建てられるわけではありません。日本の土地はすべて、国や自治体によって用途が決められており、建物の種類により建ぺい率と容積率の制限が決められています。
ここでは建ぺい率と容積率について、計算方法や活用の仕方を詳しく解説していきます。
建ぺい率・容積率をしっかり理解することで、土地に対して建築可能な面積を知ることができます。そこから自分や家族にとって、快適な生活ができる土地の広さ、家のサイズを考えていきましょう。

建ぺい率と容積率

ここでは建ぺい率と容積率について解説していきます。二つの違いを知ることで、新しく建てる家の大きさを、漠然とつかめられるでしょう。

建ぺい率とは

建ぺい率とは「敷地面積に対する建築面積の割合」のことです。敷地面積は「建物を建てる土地を真上から見た面積」のこと、建築面積とは「建物を真上から見たときの面積」のことです。
つまり、「敷地の中でどのくらいの割合を建物に使えるか」が建ぺい率の数値です。用途地域ごとに30〜80%の制限があります。
注意したいのが、どちらも「真上から見た面積」であることです。段差のある土地など、条件によっては実際に建物が建てられる敷地面積が小さくなることも考えられます。

防災上の観点で設置

新しい住宅は広い方がいい、敷地面積に目一杯建てたいと思う人は多いかもしれません。
しかし場所によっては建ぺい率が高すぎると、家が密集してしまう危険性があります。
火災が起きたとき、木造の住宅密集地は大きな被害が出る可能性があります。過去にも関東大震災や阪神淡路大震災で、住宅密集地に住む人々は、大変な被害に遭いました。
そこで国や自治体は、防災の観点から安全性を考慮し、土地の用途によって建ぺい率の制限を設けています。

風通し・日当たりの確保と美しい街づくりのため

建ぺい率によって建物の大きさが制限されると、建物同士の間に適度な空間が生まれ、風通しや日当たりを確保できます。さらに街の景観にも影響し、圧迫感のない、住みやすい街並みが実現可能です。
自治体では、住む人々の安全性や快適性を考慮しながら都市計画を立て、建ぺい率を規定しています。

上限より大きな割合では立てられない

建ぺい率の上限は地域の都市計画に沿って決まっており、用途別に制限が設定されています。決められた制限以上の割合で住宅を建てることはできません。
ただし、特別な条件によって緩和されるケースもあります。

容積率とは

容積率とは「その土地に建設可能な家の延べ床面積の割合」を表します。延べ床面積とは「建物各階の床面積」のことを指します。
つまり、「土地に対してどのくらいの空間が使えるか」が容積率の数値です。建物の階数が多いほど、容積率は大きくなります。用途地域ごとに50〜500%の制限があります。
ただし住宅にはベランダ・バルコニー、地下室、ロフト、車庫・カーポート、吹き抜けなど、延べ床面積に含まれない部分もあります。

土地に対して何階の建物ができるか

容積率をもっと簡単にいうと、「土地に対して何階建ての建物を建てられるか」ということです。
これは、人口をコントロールすることにもつながります。
マンションなどの高い建物を多く建ててしまうと人々が集中して住むことになり、インフラに大きな影響を与えます。インフラが整っていない土地に容積率を超過する建築物が立ち並んでしまうと、環境面や衛生面でも快適とはいえない場所になる可能性が高くなります。
容積率を設けることで、その土地に住む人々の快適な生活を守っているのです。

建ぺい率と容積率の計算方法

ここでは建ぺい率と容積率の計算方法を解説します。

建ぺい率の計算方法

建ぺい率(%)=(建築面積÷敷地面積)×100

たとえば、100㎡の敷地に建築面積50㎡の建築物を建てるなら、50÷100×100=50で、建ぺい率50%です。
2階建て以上の建物は、最下階である1階が一番広い面積の可能性が高いため、その場合は1階の面積で計算します。

容積率の計算方法

容積率(%)=(延べ面積÷敷地面積)×100

たとえば、150㎡の敷地に延べ床面積300㎡の建築物を建てるなら、150÷300×100=200で、容積率200%です。
逆の計算もできます。容積率150%の100㎡の敷地には、150÷100×100=150で、延べ床面積150㎡の建物が建てられることがわかります。2階建てなら1階は80㎡、2階は70㎡という設計が可能です。

同じ敷地面積でも建ぺい率と容積率で建てられる家が変わる

このように同じ100㎡の土地を基準に計算してみると、建ぺい率と容積率によって建てられる家の形が変わります。
数値で具体的に比べてみましょう。

例)条件:敷地面積100㎡・建ぺい率50%・容積率100%
建ぺい率:50㎡(建築面積)÷100㎡(敷地面積)×100=50%
容積率:100㎡(延べ床面積)÷100㎡(敷地面積)×100=100%

2階建てなら延べ床面積が1階50㎡・2階50㎡で100㎡となり、容積率の制限内です。
3階建てを建てる場合は、建ぺい率は50%のため、1階50㎡・2階30㎡・3階20㎡で、容積率の制限内です。
しかし、1階40㎡・2階30㎡・3階30㎡とした場合は、1階の床面積は2階建てよりも狭くなりますが、3階は先ほどよりも広くなります。
このように、建ぺい率と容積率を組み合わせて、用途で定められた制限内で住宅のサイズを決めていくのです。

用途地域における建ぺい率と容積率

ここでは土地を選ぶ際に知っておくべき用途地域の役割についてと、建ぺい率・容積率との関係性を解説していきます。

用途地域とは

用途地域とは、国や自治体が計画的な街づくりのために決めたエリアのことで、都市計画法によって定められています。
用途地域は土地の利用目的ごとに区分けされており、「商業地域」「工業地域」「住居地域」など13種類が設定されています。用途の混在を防ぐための区分けが目的ですが、商業地域に住宅は建てられ、工業地域に住宅は建てられないというように、複雑に規定されています。
用途地域の種類を調べるには、各自治体のホームページからや、「〇〇市 用途地域」などと検索する方法があります。

種類や上限が細かく設定されている

住宅の建ぺい率と容積率は、用途地域で上限が決まっています。ここでは住宅に関わる用途地域の上限を紹介します。

用途地域 建ぺい率上限(%) 容積率上限(%)
第一種低層住居専用地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
田園住居地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第一種中高層住居専用地域 30・40・50・60 100・150・200・300・400・500
第二種中高層住居専用地域 30・40・50・60 100・150・200・300・400・500
第一種住居地域 50・60・80 100・150・200・300・400・500
第二種住居地域 50・60・80 100・150・200・300・400・500
準住居地域 50・60・80 100・150・200・300・400・500
近隣商業地域 60・80 100・150・200・300・400・500
商業地域 80 200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300

用途地域の建ぺい率・容積率は、建築基準法第53条で定められています。
これに加えて、各自治体の都市計画にもとづいて上限が決定されるため、詳細は各自治体のホームページや都市計画課で確認しましょう。

建ぺい率・容積率を土地選びにどう活用する?

では建ぺい率と容積率を活用することで、土地選びにどのように活かせばいいのでしょうか。この章では、敷地面積に対して制限内最大の広さを確保するためのテクニックなども解説していきます。

延床面積に含まれない場所は?

前述したように、ベランダ・バルコニー、地下室、ロフト、車庫・カーポート、吹き抜けなどは、延べ床面積に含まれません。
ベランダ・バルコニーは壁や柱から突き出している部分が1m未満なら延床面積に含まれません。1m以上突き出している場合は、突き出た先端から1m後退したところまでを延べ床面積として計算します。また、ベランダ・バルコニーの両サイドが柱や壁で囲まれている場合は、延べ床面積として計算されるため、注意してください。
また、他にも延べ床面積に含まれないための条件を、それぞれ紹介します。

  • 地下室:地階にあって住宅として用途に使われており、天井の高さが1m以下の地下室は、延べ床面積に含まれません。
  • ロフト:高さ1.4m以下、ロフトがある階の床面積に対して1/2以下は延べ床面積に含まれません。
  • 車庫・カーポート:屋根がついた車庫・ガレージは建物全体の1/5までは延べ床面積に含まれません。柱や屋根のない駐車場は建物と見なされません。
  • 吹き抜け:2階の床が存在しないため、延べ床面積には含まれません。

これらの条件を間取り設計に活かすことで、容積率に規定されているよりも、広い空間をつくり出すこともできる可能性があるでしょう。
これらを取り入れた設計が可能な土地を条件に、探してみてはいかがでしょうか。

緩和措置があるのは?

一定の条件を満たすと建ぺい率が緩和される場合や、建ぺい率の制限を受けない場合もあります。これらは建築基準法第53条で定められています。緩和措置のある土地を探して、広い家をつくる方法もあります。

自治体が指定した角地

自治体が示した条件を満たしている「角地」では建ぺい率が10%緩和されます。自治体によっては公園や河川による角地でも緩和対象になる場合があります。
角地の規定は、敷地を管轄する自治体によってかなり細かい規定があり、適用地にもかかわらず気付かないケースも存在します。
角地の規定については自治体に問い合わせするか、特定行政庁のホームページや「○○市 角地緩和」で検索してみましょう。

公園や2面道路

2本の道路が交わるのではなく、2本の道路に挟まれた敷地でも10%の緩和が受けられるケースがあります。その場合、道路の幅や、敷地と道路が接する長さなどの規定を確認する必要があります。
また、同じ道路に接する敷地と公園が隣接している場合、道路と公園による「角地」と同等と見なされ10%緩和されるケースも。
これらの規定についても自治体ごとに差があるため、必ず確認をしましょう。

防火地域・準防火地域内にある耐火建築物

防火地域・準防火地域では、耐火性に優れた素材での建築が義務付けられており、さらに主要構造部分と開口部の耐火性能が高い耐火建築物には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。住宅を建てる敷地が建ぺい率70%の防火地域の場合、80%まで緩和されます。

建ぺい率80%地域の防火地域内にある耐火建築物

建ぺい率80%の防火地域内の耐火建築物だと、建ぺい率の制限がなくなり建ぺい率100%の建築物を建てられます。一般的な耐火建築物には鉄筋コンクリート造の賃貸マンションなどが該当します。住宅の場合はどのような構造が適しているか、施工業者や自治体に確認してみましょう。

高さ制限、通風や採光の制限も考慮すること

建ぺい率や容積率の制限がある中でも快適な家づくりは可能です。
建ぺい率・容積率の高い敷地で気をつけるのは高さ制限と、通風・採光の問題です。自治体によって高さ制限があり、3階建て住宅がつくれない土地もあります。
建物密集地の場合は通風や採光の確保に制限がありますが、上記で紹介した延べ床面積に含まれないロフトや吹き抜けなどを採用することで、開放感のある間取りがつくり出せます。ぜひ施工業者と最適なプランを検討しましょう。

建築制限に違反すると住宅ローンが組めなくなる恐れがある

建ぺい率・容積率が用途地域の上限をオーバーしてしまうと違法建築物として扱われ、住宅ローンを組めなくなります。
新築住宅の着工前に行う、建ぺい率・容積率を確認する「建築確認申請」の審査が通らず、建築ができなくなるためです。
建ぺい率・容積率は自治体のホームページをよく確認し、必ず守りましょう。

家づくりは建ぺい率・容積率のチェックが重要

ここまで、建ぺい率と容積率の計算方法や規制について詳しく解説してきました。
土地選びでは、場所や価格に目が行きがちですが、建ぺい率と容積率にも注目する必要があります。どんなに立地がよくても、さまざまな制限が足かせになって、住みやすい間取りがつくれない土地では意味がありません。
自治体によって細かい規定があり確認事項も多くなりますが、建ぺい率と容積率を上手に付き合いながら、理想の家づくりを目指しましょう。

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