ハウスメーカーの広告でよく見かけるようになった「スマートハウス」ですが、どのような住宅であるかご存じない方も多いのではないでしょうか。
HEMSを導入したスマートハウスは日本の住宅戸数に対し普及率が3%にとどまっているため、まだまだ認知度は低いです。
しかし実用性も高いため、今後ますます需要が高くなることが想定できます。
本記事ではスマートハウスのメリット・デメリットとコストについて紹介します。
これから住宅の購入を検討している方は是非参考にしてください。
目次
スマートハウスとは?
スマートハウスとはITと最新テクノロジーを融合させ、自宅のエネルギーを効率よく使い、利便性の向上やエネルギー消費の削減ができる住宅のことを指します。
近年の日本は省エネ化を推奨しており、かつIoTなどの最新技術を組み合わせた住宅が人気となっています。国策と時代に合わせた住宅がスマートハウスともいえるでしょう。
スマートハウスにすることで以下の3つの効果が見込めます。
- IoTによる遠隔家電操作
- HEMS(ヘムス)で電気消費量を確認
- 太陽光発電による蓄電
IoTによる遠隔家電操作
Iotを導入した住宅は屋外に居ながらも家の家電を操作することが可能となります。
IoTとはInternet of Thing(インターネット・オブ・シングス)の略称で、モノをインターネットで繋ぐことを意味します。
スマートフォンで家に着く時間に合わせてエアコンや照明をつけたり、鍵の施錠確認もすることが可能です。
さらに近年では家電のIoT化が進んでおり、買い物途中に冷蔵庫の中身を見ることができ、足りないものがないかの確認も行えます。今後もIoT化した家電も増えて行く見込みであるため、住宅には欠かせないものとなるでしょう。
HEMS(ヘムス)で電気消費量を確認
HEMSがあれば月々の電気消費量を確認できるため、節約効果も見込めます。
HEMSとは「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略称です。
月々の電気使用量やガス使用量がモニター画面で確認できるようになり、ライフラインの使いすぎに対応した「自動制御システム」も導入されています。
無駄なエネルギー消費を使わないようにするためのものであり、2030年までに全住宅へ設置することを政府は目標と掲げています。
太陽光発電の蓄電
自宅の屋根に太陽光を設置して蓄電することで、自宅のエネルギー消費を抑えることができます。
電気は電力会社から供給を受けて使用しますが、蓄電された電気を使用する場合は電気料金を支払わずに使用できるため、月々のライフライン料金を抑えることが可能です。
さらに蓄電は災害時に大きな役割をもたらします。2011年の東日本大震災の時は、電気が止まり、被災者も大きな苦労をしました。しかし非常用電源でもある蓄電があったことで明るさを確保でき、料理もできたという家庭も多くありました。
地震大国である日本では、今後太陽光発電による蓄電はますます普及していくでしょう。
スマートハウスのメリット・デメリット
スマートハウスにはさまざまなメリットがある一方でデメリットもあります。双方を理解した上で、スマートハウスの導入を検討することが望ましいです。
ここでは3つのメリット・デメリットを紹介します。
スマートハウスのメリット
スマートハウスのメリットは以下の3点が挙げられます。
- 住環境の向上
- 電気料金の削減
- 災害時の備えにできる
住環境の向上
先ほどもお伝えした通り、IoTの導入により住環境の向上が図れます。
もちろんIoTに対応した家電が必要となりますが、今後の普及は間違いないものと言えるでしょう。現に大手家電メーカーでもあるパナソニック株式会社はIoTとAIを融合させた家電に特化した開発を行う方針を続けています。
IoTの普及が広がることで住宅にもたらす影響も大きく、より快適な生活を過ごせるようになるでしょう。
電気料金の削減
HEMSの導入により、月々の電気料金の「見える化」ができるようになりました。つまり、「今月は電気を使い過ぎたかの判断ができるようになった」ということです。電気料金が分かれば、節電意識を持つ方も多いのではないでしょうか。近年では深夜帯の電気料金が安いため、節電意識を持ち電気の使用時間を変更している方も多く見受けられます。
災害時の備えにできる
太陽光発電による蓄電は災害時に大きな役割をもつ旨をさきほどお伝えしました。
2022年現在では、「首都直下地震」と「南海トラフ地震」が30年以内に70%の確率で発生すると内閣府が発表しています。大地震の発生時はライフラインの供給が止まる可能性も高いですが、蓄電していることで電気の確保はできるメリットがあります。
スマートハウスのデメリット
スマートハウスには大きなメリットが挙げられるものの、デメリットもあります。ここでは3つのデメリットを紹介します。
- 初期費用がかかる
- メンテナンス費用が発生する
- 想像以上に蓄電できないこともある
初期費用がかかる
スマートハウスにするためには太陽光発電やHEMSの設置が必要なため、200万円前後の初期費用がかかります。
経済産業省が令和3年に発表した「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」によると、2022年の1kwあたりの平均設置費用が25.9万円になる想定をしています。戸建て住宅の太陽光発電量が5kw前後であるため、約129.5万円の費用にもなります。近年では太陽光発電を設置する業者も増えたため年々費用は低下していますが、それでも決して安い価格ではありません。さらにHEMSや蓄電池の設置やIoT対応機器などの費用を加味すると、おおよそ200万円は初期費用として必要となります。
メンテナンス費用が発生する
太陽光は年数が経過することで蓄電できるパワーが低下します。屋外にあるものなので、雨風の影響だけでなく紫外線によって経年劣化が発生し、設置当初の能力が見込めなくなります。そのためメンテナンスはかかせません。
太陽光のメンテナンスは機器の補修料金だけでなく、足場料金なども必要となるため高額な費用になります。
また蓄電池も同様に経年劣化によるメンテナンスが必要です。一般的には屋内に設置するため、太陽光ほど劣化は早くありませんが、災害時などに使えないことがないように定期メンテナンスは怠らないようにしなければいけないデメリットがあります。
想像以上に蓄電できないこともある
太陽光はメーカーや設置場所によって蓄電できる能力が異なります。価格の高いメーカーが良いとは言えず、安いから蓄電力が低いともいえません。
太陽光の蓄電は屋根の向きや角度、地域によって異なるため、一概にどのメーカーが良いとは言えないのです。太陽光を設置する場合は、どれくらい蓄電効果が見込めるかを計算してもらい、費用対効果があるか判断してから検討しましょう。
スマートハウスは省エネになる?
先ほどもお伝えした通り、スマートハウスにするための設備費用は200万円ほどにもなります。2020年度のフラット35利用者調査では、全国平均注文住宅面積が124.4㎡(37.63坪)でした。200万円の設備費用を37.63坪で割り返すと、一坪当たり5.3万円であることがわかります。つまり、これからスマートハウスを建築される方は、延床面積に坪単価をかけることでおおよその費用を算出できるでしょう。
もちろん建築会社やメーカーによって金額は異なるため、一つの目安としておきましょう。
また一般家庭の1日の電気使用量はおおよそ8KWh〜12KWhなのに対し、蓄電池の充電が満タン状態では16KWh程であるため、1日〜2日は蓄電分で生活可能です。充電は季節や天候によってことなるものの、8時間ほどで満タンになるため。理論上は毎日蓄電で生活できることにもなります。さらに電気料金は5人家族で1か月12,000円前後であるため、初期費用200万円分を7年2か月で元を取れるという仕組みです。
あくまで理論上のため上記の計算のようになるとは言えませんが、設置してから7年3か月以降はランニングコストはかからないとも言えるでしょう。
スマートハウスの導入補助金を利用しましょう
冒頭にもお話した通り、日本政府はエネルギー削減を推奨しています。そのため省エネ化が見込めるスマートハウスの建築には補助金を支給しています。
ここでは使用できる補助金について紹介するため、スマートハウスを建築する際は利用しましょう。
補助金は国と自治体にある?
残念ながら太陽光に関する補助金は自治体しかありません。国に関しては2021年まであったものの、一度打ち切りとなりました。
しかし蓄電池や太陽光発電の補助金に関連する各省の要求額は前年度より向上しています。
各省 | 令和4年度要求額・要望額計 | 前年度予算額 |
環境省 | 4,345億円 | 3,233億円 |
経済産業省 | 10,825億円 | 9,170億円 |
国土交通省 | 71,249億円 | 60,578億円 |
2021年に環境省は温室効果ガス削減の宣言を行い、さまざまな取り組みを発表しました。その中には太陽光発電や蓄電池の補助制度も導入すると言っています。
いつ補助金制度が発表されるか分からないため、国のホームページはチェックしておく必要があるでしょう。
自治体の補助金
国の補助金はないものの、自治体の補助金は支給額だけでなく名称も異なります。詳しくは各自治体へ確認しましょう。
ここでは一部地域の補助金について紹介します。
地域 | 補助金名 | 補助金額 |
北海道 | 再エネ省エネ機器導入補助金制度 | 1KWhあたり2.5万円(上限は17.4万円) |
宮城県 | スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金 | 4万円 |
東京都 | 省エネルギー改修等助成制度 | 対象の20%(上限は75万円) |
愛知県 | 住宅等の低炭素化促進補助 | 築10年未満:1Kwあたり2万円(上限13万円)
築10年以上:1Kwあたり2万円(上限19.5万円) |
大阪府 | 住宅用太陽光発電システム等設置事業補助制度 | 1KWhあたり1.25万円(上限は5万円) |
今後補助金対象の見込みがあるもの
現在では補助金制度が確立されていないものの、国が省エネを推奨しているためスマートハウスに関連する補助金は支給されるでしょう。
ここでは2つの補助金対象が見込まれるものを紹介します。
太陽光発電の補助金
2022年度の太陽光発電と蓄電に関する補助金は未だ発表されておりませんが、2020年・
2021年と継続されて交付される予定です。もちろん正式発表がないため一概には言えませんが、2020年と2021年は以下の補助金が支給されました。
2020年度DER補助金 | 蓄電容量1KWhあたり2万円 |
2021年度DER補助金 | 蓄電容量1KWhあたり4万円 |
上記の表を見てわかる通り、補助金額が2倍へ上がっています。2022年も更に2倍となるかは分かりませんが、補助金が確立されれば上記のような金額を支給してもらえるかもしれません。
HEMSと蓄電池
平成23年と平成25年に、一般社団法人環境共創イニシアチブが国から請け負ってHEMSの補助金を行っておりました。
2022年現在では国からの補助金はないものの、2030年までに全住宅への導入を目標としているため、今後なにかしらの補助金を支給するかもしれません。
なお、平成23年と平成25年時の補助金は以下の通りです。
年度 | 補助金内容 |
平成23年 | HEMSの費用の1/3まで支給(上限7万円) |
平成25年 | 定額7万円の補助金を支給・
東日本大震災の特定被災区域、検定付き電力計を搭載したHEMS機器を設置する場合は定額10万円を支給 |
またHEMSと同時に蓄電池を設置する場合は「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」を受け取ることも可能でした。
現在では補助金が終了したものの、今後も再度補助金が確立される可能性もあるため過去の事例を紹介します。
対象者 | 10Kwh未満の太陽光パネルの設置をした方もしくは設置を検討している方 |
補助金対象物 | 家庭用蓄電システム費用、HEMS機器費用、設置工事費 |
補助金額 | 最大60万円 |
より少なく、より良いライフスタイル
今回スマートハウスのメリット・デメリット、コストや補助金について紹介してきました。
スマートハウスは実用性も高く、省エネ化が期待できる住宅です。環境汚染やエネルギー消費が世界各国で問題視される中で、今後ますます日本でも普及が見込まれます。
コストはかかるものの費用対効果も高いため、これから住宅の購入する方は、スマートハウスの導入も検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、購入前には国と自治体の補助金制度を確認してからにしましょう。